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永遠の繭期がテニス少年たちを追っかける

舞台「チエコ」感想

今回も副島和樹くんを見に遠征してきました!

 

「チエコ」

2018年2月1日(木)~5日(月)

両国Air studio

 

智恵子抄を軸にした、高村光太郎と妻智恵子のお話。

副島くんはC班なので、3日21:00と4日12:30の回を観劇。

 


 『智恵子抄』は高村光太郎で、高村光太郎といえば『道程』ぐらいの知識だったので、高村光太郎関連の本を引っ張り出しで予習。



結果的には予習して良かった。

観劇前の高村光太郎へのイメージは「耽美、感傷、はかなさ」とはかけ離れた「鋭い自然の厳しさ、厳しさの中に光る美しさ、雄々しさ、理想を追いたい」といった、男性的というか、血筋故に彫刻的というか。


舞台「チエコ」はそのようなイメージとは違った、高村光太郎の妻智恵子への愛やいたわり、慈しみに溢れる舞台でした。


【↓↓↓ネタバレ注意↓↓↓】



始まりは光太郎と姪・春子とのシーンから。光太郎が梅酒を持っている。

「十年の重みにどんより澱んで光を葆(つつ)み、いま瑚珀の杯に凝って玉のやう」な梅酒。宝石みたい。誰かが誰かの為に遺した物に触れる瞬間。おたくこういうシーン好き。


草野心平と中原綾子の登場。

草野さんおもしろすぎません?素面なのに酔ってるみたいで、でも心の機微に聡そう。

綾子さんはすごく美人で見とれてしまった。

2人に『智恵子抄』を作ろうかと思うと相談する光太郎。私、チエコを初観劇したのが3日21時の回だったので、分からなかったけど草野さん!!!(^o^)

でも草野さんだから大丈夫(?)


『あどけない話』のナレーションから過去のシーンへ。

光太郎のアトリエにて智恵子と友人の俊子の2人。俊子さんの服のセンス好きだな。調べたら女優でもあったんですね。知らなかった。生前のお写真みてもおしゃれな人!

カナダをキャナダと発音するのもツボ。


散歩から帰ってきた光太郎と、弟の豊周。

推しの和装!!!!!ありがたいな!!!!!!!!!(?)

推しの和装だけで飛行機乗って見に来た甲斐があるわ。

高村豊周の作品を検索して画像見たら、シンプルというか清廉というか、作中の豊周さんも人物像もそんな印象。ストレート。真面目。

その豊周さんから父高村光雲の跡を継ぐよう説得された後の光太郎のこの言葉。


「いくら目隠をされても己は向く方へ向く。 いくら廻されても針は天極をさす。」(『詩人』)


短い言葉に理想も葛藤も詰めるのすごい。


場面変わって、智恵子を呼ぶ光太郎。返事は無い。

豊周が軽装で出て行くのを見たと知って、何故どこに行くか聞かなかったんだと問い詰める光太郎さん落ち着いて~~~!豊周気を回したんにな。

智恵子は無事戻り、「空を探していた」と。

豊周さんは「姉さんは呑気な方ですね」綾子さんは「可愛らしい方だったんですね」と話していたけれど、もうすでに精神が壊れ始めていたのでは。


時は戻り、光太郎のアトリエ。

草野さんおもしろすぎません?(2回目)

台本買ったんで読んだけど、舞台上の草野さんオリジナリティ大発揮。

個人的には春子ちゃんじゃなくて綾子さんとはどうだろう。才能持つ同士、綾子さんなら草野さんを御せそうじゃないですか。


過去に行き、光太郎のアトリエ。

ゆるやかに壊れ始める智恵子さん。


「――私もうぢき駄目になる」(『山麓の二人』)


「まつたく行くべきところが無い」「深みに落ちる」*1ような疾風怒濤の青春時代から自分をを救い上げた智恵子。「クルスの代わりにこのやくざ者の眼の前に奇蹟のやうに現れた」*2智恵子から発せられるこの言葉を受け止める光太郎の心情を思うと苦しい。


時は戻って光太郎のアトリエ。光太郎に呼ばれた草野。

「こう見えても、僕、高村さんには気を遣っている方ですよ」(ソファにでーーーん!と座りながら)

草野さんが出てきて面白くないときって無いな(^o^)

シリアスなシーンも多いから、草野さんいるとほっとする。

ほっとしたところで、暴れる智恵子を連れて部屋になだれ込んでくる豊周。

光太郎さんにつれられて出て行く智恵子さんは童女のよう。けど、ドアからそっと覗いているときの表情は氷のようでぞわっとした。


残された草野さんと豊周さんのやりとり。

豊周さんは光太郎さんのこと大事なんやなあ…。それと推しの変顔?かわいい。


俊子来る。

豊周さんのあのちょこんとしたひげかわいいな。(どんなひげでも推しはかわいい)

俊子さんは智恵子さんの友人でありファンなんですよね。誰も悪くない。悪くないから責められない。でも責めずにはいられない。俊子さんには俊子さんの芯があって好きです。

綾子さんが怒るのも当然だけど。春子ちゃん含めチエコの女性は強い。女性は太陽。


場面かわって智恵子生前。

病室で切り絵をする智恵子さん。お世話をする春子ちゃん。春子ちゃん良い子やなあ…。

すでに「人間界の切符を持たない」智恵子さん、切り絵を作る穏やかな表情から終わりが近いと予感させる。


戻って、俊子さん綾子さんが切り絵を見る。俊子さんの表情。亡くなってしまったけど、出会いたかった高村智恵子に会えて良かった。


そして、ラスト。

このシーンずるくないですか??めっちゃ好き。何の花だろうとおもったらグロキシニアって台本に書いてありました。

グロキシニアって『亡き人に』ですか!!!えーーーんこれは泣く。


「あなたはまだゐる其処にゐる あなたは万物となつて私に満ちる

 私はあなたの愛に値しないと思ふけど あなたの愛は一切を無視して私をつつむ」


まさにまさに智恵子さんの愛が光太郎を包み、智恵子は「元素」となって光太郎の中に居るんだね…綺麗すぎて泣くわ本当…。



勢いでここまで書いたから続けて勢いで各登場人物について。


高村光太郎(野地伸吾)

智恵子さんを呼ぶとき「智恵さん」って声が優しくなるのめっちゃ好き。

舞台では描かれなかった光太郎のその後を思うと切ない。


高村智恵子(山口萌美)

壊れていく智恵子さんに鳥肌。振り幅がすごい。


○高村豊周(副島和樹)

一歩一歩、歩を進める副島くんを推すのは本当に楽しい。

目線も気を配って、声のトーンも変えて、丁寧やろうと頑張っているのすごく良かった。

○春子(杉本優羽)

かわいいな…って舞台見ながら500回ぐらい思った。

名前の通り、春みたいな子だった。


草野心平(竹ノ塚洋)

草野さん草野さんって名字で呼ばれてるから最初気付かなくって、なんで胸ポケットに蛙突っ込んであるんだろうと思ったけど、後から蛙の詩の人って思い出した。

今この感想書きつつ草野心平の詩集読んでて、「まじ草野心平おかしいな…」と思ってたんですけど、ときどき写実的な詩もあるし、舞台チエコの草野さんのキャラは草野心平の詩そのものですね?


○中原綾子(伊田麻友香)

綺麗すぎて見とれた。穏やかなのに内には強さも湛えている女性って印象。


田村俊子(箕輪菜穂江)

俊子さん、情熱的なところも友人思いなところも好きです。

服のセンスが光ってる。



感想書くと、何か自分偉そうだなって思うんですけど備忘録だからご容赦ください。

チエコ良かったな…!心に沁みた。


 

 

 

 

*1:詩集『典型』暗愚小伝 デカダン より

*2:同上